オープンデスクの記録(清水祐吏果さん)

2024年6月26日

3月からしなやかデザインのオープンデスクに参加してくれている清水さんが、その記録を書いてくれました。個性的な発想や、プレゼンテーションの際にも落ち着いて話せるメンタルなど、将来有望な清水さんは、現在もグラフィックデザイナーとして就職活動中だそうです。以下寄稿してくれた文章を掲載します。

————–

はじめまして

はじめまして、清水と申します。しなやかデザインでのオープンデスクに参加し始めて3ヶ月目になる5月の中頃、この記録を書いています。私はグラフィックデザイナーを目指して上京し、1年間デザイン(主にグラフィック・web・エディトリアル)を学ぶことのできる学校に通っていました。現在は、しなやかデザインの事務所と同地の清澄白河にあるプラントショップでアルバイトをしながらオープンデスクに参加し、デザインと就職活動に励んでいます。

オープンデスクに応募

オープンデスクに参加しようと思ったわけは、ずばり就職活動が難航していたからでした。悶々とする日々を過ごしながらネットで東京のデザイン事務所を検索していたところ、見慣れない「オープンデスク」という文字が目に入ってきました。場所は清澄白河。穏やかで澄んだ空気を感じる清澄白河という街がとても好きで、そんな場所にあるデザイン事務所ということに、まず興味が湧きました。

しなやかデザインのサイトそのものやそこに載っている作品はどれも誠実で配慮があり、あたたかさを感じました。(実際オープンデスクに参加し、藤原さんと日々お話ししたりして、人柄ってやっぱりデザインにも出てくるんだな~と思ったりしました。)そんなしなやかデザインでオープンデスクに参加したら、自分のデザインやそれに関する扉を増やせそうだと思いました。

同時に、実務の現場でデザインと真剣に関わりたいという気持ちがやはり強くありました。環境を変え気持ちも切り替えてデザインと就職活動に挑むぞ!という決意のもと、オープンデスクに応募しました。

オープンデスクに参加

2月の末ごろ藤原さんと面談をしたのち、別日に一度出社をしました。そこで、しなやかデザインのもう一人のスタッフ佐々井さんと、私と同時期に参加が決まったもう一人のオープンデスクの遠藤さんとはじめましての挨拶を交わしました。自己紹介をしたり、藤原さんの提案で3人それぞれのポートフォリオを紹介し合ったり。おふたりのポートフォリオを拝見し、印象が違いつつもそれぞれ得意分野で輝いていて、自分との差を感じ少し自信を無くしました。と同時に、こんなにすごい人たちと関わることができるのかと嬉しくもなり、これは成長のチャンスだと思いました。

本格的には3月から、オープンデスクを開始しました。出社の頻度は週に2日ほど。アルバイト先で頼まれていたデザインの作業や、藤原さんが作られたロゴのカラーバリエーション出し、そのロゴを使用する際のガイドラインを前例に沿って作成など。別の案件ではロゴの形のバリエーションを出したりとさまざまな経験をさせていただきました。バリエーションを出したロゴの案件は、結果私の案が採用され、驚き半分嬉しさ半分でした。

作業に一区切りがつき次第藤原さんや佐々井さんにフィードバックをいただいたり、自分で区切りどきが見えなければ藤原さんの方から声をかけ進捗を聞いてくださったり。藤原さん自身の仕事の傍らそこにいるスタッフの状況把握を怠らない配慮が、右も左も分からない私にとってはとてもありがたいことでした。藤原さんだけでなく、しなやかデザインのおふたりのアドバイスはいつも的を得ているというと上から目線過ぎますが、自分自身でも言語化でききらないところに気づいて言葉にしてくださったり、すぐに具体例を出してくださったり、一緒に悩んでくださったりと、ためになることがたくさんでした。

また、通っていたデザインスクールでは写真の撮影についても学んでいたので、カメラも少し触って合成用の写真を撮ったりもしました。学んできたことが少しですが仕事の役に立つのは、嬉しいことです。

ヤツカケル

オープンデスク期間中、なかでも特に時間をかけ、自身の力になったと感じていることがあります。それは、「ヤツカケル」という埼玉県草加市谷塚の地域を盛り上げる企画で、コンセプトの提案/デザイン(ロゴ・フライヤー)の制作・提案をしたことです。

実際に現地に行って話を聞いた佐々井さんと遠藤さんから企画の概要を教えていただき、参考事例探しとコンセプトの考案に入りました。まずは佐々井さん・遠藤さん・私でそれぞれコンセプトを考えてみて、共有の場で藤原さんにフィードバックをもらうというような形。

私が初めに考えた案は、「ヤツカケル」の「カケル」に注目したもの。「カケル」にはさまざまな意味を持たせることができる(書ける、駆ける、欠ける)ため、ヤツカケル名義で行うイベントの内容ごとに「カケル」に当てはめる字を変えていく、というものでした。

1回目のフィードバックでは、「デザインの方向性を示しきれていない」「谷塚ならでは感がない」という点で指摘をいただきました。確かに考えてみると、この案をデザインに落とし込むことは、できたとしてもすごく時間がかかりそうだと感じました。「デザインの指針となる(今後デザインや使用する写真の選択をしやすくなる)ような」コンセプトを目指し、再度案を考えました。

その際、もう一度クライアントが求めていることを確認し、それを叶えられるようなコンセプトになることを意識しました。クライアントが求めていることで注目したのが「地元の人が作る場所」「近隣の地域との差」。他とは違いアンダーグラウンドな雰囲気を持つ谷塚に合うような言葉「ベース」をキーワードに、「好きなものややりたいことをかき集めて、みんなで作り上げていく谷塚」というコンセプトで藤原さんに提案。

2回目のフィードバックでは、「ベースと言ったらあれ!というものがあまりないので、ベースのイメージを揃えられるような形容詞が欲しい」という指摘をいただきました。デザインに起こすことも意識しながら考えたはずが、意識が足りませんでした。そもそもここまで考えておいて、自分自身この案で100パーセントノリノリでデザインできている未来は、正直見えませんでした…。しっくりきていないことを伝えると藤原さんは、自分でしっくりきていないならコンセプト自体もこの案じゃないのではとアドバイスをくださり、再度新しい案を考えることにしました。

谷塚についての情報を探していると、「谷塚は海抜3.45mで、埼玉県の中で最も低いところの駅」という情報が出てきました。「他よりも土地が低い」ことから考えを巡らせ、谷塚を「おとしあな」に見立てるというアイデアが浮かびました。「実際のおとしあなのように、今は見落とされてしまっている谷塚」「みんなで掘り下げていく谷塚」という意味にも捉えられると思い、それらを踏まえてもういちど藤原さんに提案。おもしろそうなのでこれで固めてみようということに。実際、私はすでにその案でデザインをしている自分が想像できていました。胸、撫で下ろし…。

次に、ムードボードの作成です。コンセプト「おとしあな」のデザインの方向性を、「かたち」「いろ」「フォント」「写真」の4項目で示し、それを2パターンで作成しました。

こうして揃ったヤツカケルのコンセプトを、クライアントに3人それぞれが提案することになりました。クライアントへの提案の経験がない私は、しっかりシナリオを作りプレゼンに挑むことにしました。そのシナリオを作ったおかげか伝えたいことをうまく伝えることができたと思います。クライアントの方には、3人の案をとても喜んでいただき、それぞれでデザインに落とし込んで1ヶ月後に再度プレゼンするという運びになりました。

コンセプト「おとしあな」は、作成した2パターンのムードボードのうちひとつに絞り「楽しげ/おどけている/シンプル/記号的」のイメージでロゴ・フライヤーを制作することになりました。提案の時点でなんとなくはデザインの想像はできていたものの、やはり経験の浅い私は自分で考えたコンセプトでも、デザインに落とし込むことに時間がかかりました。ぜひ、試行錯誤の様子をご覧ください。

丸1ヶ月ヤツカケルのデザイン制作に注力しました。紆余曲折を経て、クライアントに提案することになったのがこちらの案です。

そして、デザインをプレゼンする際に使用した資料がこちらです。

プレゼンの際は、私も実際に谷塚に行って直接クライアントの方々とお話しすることができました。緊張しましたが、なんとか伝えたいことを練習どおり伝えることができて一安心。先方は、今回も3つのデザイン案に対し喜んでくださり、とても悩んでくださっていました。

また、クライアントの方々からフィードバックをいただけることになり、自分のデザインが、他のひとの頭の中で自分でも想像していなかった領域まで広がることの嬉しさを感じることができました。

結果として、私の案は選ばれませんでした。選ばれた案は、企画の目指す方向や谷塚のイメージと合致する部分が多く素敵なコンセプトとデザインで、デザインは適材適所なのだと強く感じました。選ばれなかったことは悔しいですが、自分の出した案に自信を無くすわけではなく、今回私の案はこの企画に最適でなかったのだと考えることができました。

今回の「ヤツカケル」を通して、デザインの仕事の上流部分に携わることができました。人生そううまくはいかない…!ものですが、一つの仕事に対し複数人で切磋琢磨するという、とてもとても有難い経験が私の中に積み重なりました。

オープンデスクで経験できたこと

正直、オープンデスクに応募した時点では、短期間でこんなにも色々と携わることができるとは考えていませんでした。しなやかデザインはWebデザインを得意とする会社で、サイトのブログを読んで知った、前回オープンデスクに参加された渡邊さんもWeb専攻の方。グラフィックの方面を目指している私は一体オープンデスクで何ができるだろうと考えていました。が、しなやかデザインのもう一人のスタッフ佐々井さんはグラフィック専攻の方だと知り、グラフィックの方にも力を入れようとしているのだと感じました。そこでなら学べること・お手伝いできることがありそうだと思いオープンデスクに参加することを決めました。

前述しましたが、実際にお手伝いさせていただいた内容はこちらです。

クライアント①

・ロゴのカラーバリエーションを制作
・ロゴを使用する際のガイドラインの作成(前例に沿って)
・Webサイトに載せる写真の撮影手伝い(現地にて)

クライアント②

・ロゴの形のバリエーションを制作

クライアント③

・合成用写真の撮影(事務所にて)

クライアント④

・企画のコンセプトの考案・提案(Zoomで提案)
・↑のコンセプトでのロゴ&フライヤーデザインの制作・提案(現地で提案)

週2日を約3か月で、上記の仕事に関わることができました。また、デザインについてやそれ以外でも知らなかったことを教えていただいたり、就職活動を見守っていただいたり、たくさんお世話になりました。どれも一人で悶々としているだけでは経験できなかったことばかりで、オープンデスクに参加して得られたものは計り知れません。本当に大感謝です。

私のオープンデスクの記録は以上です。参加してみなければ分からなかったことが山ほどあります。参加して損なことはないはず。力になること間違いなし。そして私自身、この経験をしっかりと活かせるようデザインに励んでいこうと思います。

このような文章を書くことが私史上おそらく初めて&本当の記録として書いているふしがあるので、読みづらい箇所が多々あるかと思いますが、これからしなやかデザインのオープンデスクに参加しようと思っている方の参考に、少しでもなれば嬉しいです。

しなやかデザイン、ありがとうございました!!

その他の記事

ブログ記事一覧へ