デザインにおける演出、あえて制約の中でデザインすること

2021年5月5日

昨年しなやかデザインで制作したウェブサイト「くらす はたらく いちはら(https://lifework-ichihara.com/)」を見た知人から「藤原さんが作ったっぽいなと思って調べたら、実際藤原さんだった」と言われた。このサイトに限らず自分のデザインに多少なりとも、しなやかデザイン「らしさ」があることについて少しだけ自覚している。具体的に言葉にするなら「演出をあまりしないデザイン」が「らしさ」なのだと思う。

これはデザインによる過剰な演出を良しとしない自分の価値観に加えて、自分のキャリアの中で後天的に経験したことからも影響を受けている。以下、そのことについて少し文章を書いてみようと思う。

僕は新卒で入社した会社で地方自治体のウェブサイトに数多く関わってきた。自治体のウェブサイトというものは非常に制約が多い。老若男女幅広いユーザーをターゲットにしなければならないことによる制約や、運用上の制約、無難なものを求める行政組織の体質的な制約など、様々に不自由な条件でデザインをしてきた。(今は多少自由になっているのかもしれないが、少なくとも00年代の自治体のウェブサイトはそのような状況にあった)

例えば、フォントを選ぶときは個性的だだったりスタイリッシュなフォントではなく、オーソドックスなフォントの中から品質の良いものを選ぶし、レイアウトにしてもシンプルに要素を並べる中でちょっとした余白の使い方で美しく見えるよう気をつかう、僕はそのようにしてデザインをしていた。当時はもっと華やかなデザインをしてみたい気持ちもあったけれど、なんだかんだ言って制約の中でどうしたら良いデザインになるか試行錯誤することが嫌いではなかった。

今現在、僕のデザインに「らしさ」があるとすればその当時の経験からの影響は多分にあると思う。あの頃の試行錯誤が自分の基礎体力の一つだと感じている。

もうひとつ、今の自分のデザインに影響を与えたものがある。それは2016年前後からいくつかのプロジェクトでとあるデザイナーと一緒に仕事をしたことだ。その人のことは以前から一方的に知っていてすごいデザイナーだと思っていたのだが、とある場所で知り合って、声をかけてもらい、いくつかのプロジェクトで彼がディレクション、僕がデザインをするという形で仕事をした。あくまで僕の認識の中で、その人も抑制的なデザインを好んでいて過剰な演出を良しとしない人だと思っている。そんな人との仕事は必然的に抑制的なデザインになっていくことが多い。実際にはわりと自由にデザインさせてくれるのだけれど、やはりディレクターとしての方向づけはあり、プロジェクトごとに写真は断ち切りで使わない、色ベタを使わないなど、装飾性を抑えるような、制約(あくまでゆるい)の中でデザインをした。それらの仕事は僕の中でも大変面白く取り組めた仕事で、そこでうまくいった部分もいかなかった部分も、自分にとってとても大事な栄養となり、その後の仕事に影響を受けている。

以上のように、自分がもともと持っていた好みに、経験が加わることで自分のデザインが成り立っているのだと思う。プロジェクトによってはあえて自分で制約を決めてデザインに取り組むこともある。最後に上記の方向性で作ったデザインをいくつか紹介して記事を終わりにしたいと思う。

ラボ出版 リブランディングプロジェクト

https://shinayaka-design.com/works/web/labo-branding/

このプロジェクトで作った冊子とウェブサイトは、写真は断ち切りでは使わず、フォントもニュアンスはあるがシンプルなゴシック体でまとめるなど、演出的なデザインは極力抑えるように作った。ウェブサイトの写真の一部に角丸を使っているところとベージュ背景のところだけ例外的にアクセントをつけている。

オープンロード合同会社 ウェブサイト

https://shinayaka-design.com/works/web/openroad/

ウェブサイトのデザインはシンプルに、各プロジェクトを紹介する記事にリソースを大きく割いた。クライアントに複数回インタビューを繰り返し、彼らの取り組みを読んでもらうことを主眼においたウェブサイトになっている。

ドラマチック四街道 ウェブサイト

https://shinayaka-design.com/works/web/dramatic-web/

千葉県四街道市のプロジェクト。写真や映像などが重要なコンテンツであるため、デザインによる演出は極力抑えている。その分テキストの読みやすさにはとても気を使った。

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